米国環境保護庁(EPA)は6月15日、パーフルオロアルキルとポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に関するガイドラインを発表した。米バイデン政権は2021年10月にPFASに関して規制を強化する方針を発表しており(2021年10月21日記事参照)、今回のガイドラインはこれを受けた措置。
ガイドラインでは、PFASが発がん性や免疫力の低下など人体に及ぼす悪影響の可能性を踏まえ、基準を全般的に大幅に強化している。PFASのうち特に毒性が強いとされるペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)については、これまで水道水1リットルの含有量はPFOA・PFOS合算で70ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)以下が安全性の目安とされてきたが、PFOSは0.02ナノグラム、PFOAは0.004ナノグラムに変更している。EPAは今回の変更について「最新の科学的見地を踏まえ、生涯にわたって摂取し続ける影響を考慮し決定した」「ゼロに近い量でも健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と説明している。また、PFAS削減に取り組む地方政府に対しては、雇用インフラ投資法(2021年11月9日記事参照)で措置されている10億ドルを基に資金支援することも併せて発表している。
業界団体の米国化学工業委員会(ACC)は「ガイドラインの水準までの引き下げは現在の技術では不可能であり、(濃度検査もできないため)検証もできない」とし、EPAを批判している。
EPAが規制強化に動く背景には、国際的にPFAS規制が強まっていることがある。米ロードアイランド大学によると、EUのPFOSとPFOAで規制基準はEPAの旧基準の20倍以上の厳しい基準であり、加えて、EUは2022年7月までにPFASに関する新たな規制を提案することも発表している。EPAの今回のガイドラインに拘束力はないが、同年秋にも拘束力を伴った規制案を公表予定としており、EPAもEUの動きに足並みを合わせる。
PFAS規制に関して、日本では水道水1リットル中のPFOS・PFOA合算の濃度で50ナノグラム以下が安全性の目安としている。今回のEPAの規制強化の動きは、欧州の動きと併せて、日本の現行基準の議論にも影響を与えそうだ。